美容・形成外科医 中村優のブログ

美容・形成外科・メディカルイラストレーションなどについて書いていきます。

埋没二重術 ~手術方法を比較して自分に向いた方法を考えよう~

 

こんにちは。形成外科認定専門医の中村優です。
今回のテーマは、埋没二重手術の方法を比較してみよう!というものです。

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各クリニック毎に必殺技かのような、はたまたキラキラネームともいうような名前で、自分のクリニックの手術方法の素晴らしさをプレゼンしています。ネーミングは大事で、売り手(美容外科)側からしたらキャッチーな名前で少しでも印象に残れば勝ち、みたいなところがあるわけですが買い手(患者)側からすると、中身がよくわからないものになっている節があります。

 

ということで今回の記事の対象は埋没二重を考えている方です。
今回の記事を読んで分かることは


☑二重はどうやって出来るのか ~一重と二重の違い~
☑埋没二重手術とは
☑糸の入れ方でどのような差が生まれるか

です。ちなみに特定のクリニック・手術についての是非を決めるものではありません。
あしからず。ということでここから本題。

 

さて、まずは二重はどうやって出来るのかを説明します。

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   正常眼瞼(一重)     正常眼瞼(二重)

 

先端の灰色が瞼板
水色が眼窩隔膜及び挙筋腱膜
赤色はミュラー
薄ピンクが眼輪筋


このように、二重の人は挙筋腱膜(水色)の枝が皮膚まで届いているため開瞼時に重瞼線(=二重のライン)が現れます。一重の人はその枝がないor弱いため皮膚へのひきつれが出来ないためラインが入らないのです。

 

ということはその挙筋腱膜(水色)の枝を糸で再現してやろうというのが埋没法の手術なわけです。

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それでは手術方法の違いを説明するにあたり、糸が入れられる部分の断面図(上の右図)をここからは見ていこうと思います。

 

まずは一番シンプルなもの。

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糸・針を入れたところから入れ直せば皮膚側、結膜側には穴がひとつずつできるだけですね。皮膚を粘膜側にひきつれさせることで二重の食い込みが作られているので

    \ブニン/
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と、皮膚側の糸が外れて奥へ沈み込んでしまった状態。これがいわゆる埋没が外れた状態なわけですね。

 

ではどうすれば外れにくい埋没ができるのでしょうか。
それは、圧力を分散すれば良いのです。

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  本数を増やしたり・・・

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  1本を横に広くいれてみたり・・・

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  2本入れつつ絡めあわせてみたり・・・

 

ここが糸を沈み込ませないための各クリニックの工夫のしどころなわけですね。

で、覚えてもらいたいことは

・現状最も外れにくい方法であると結論できる埋没固定方法はない

ということです。

治験が組まれてしっかり証拠づいてやっているものは現在までないので「~法が一番外れにくい」とは言えるはずがないんですよ。もしそういう類の事を言われたら眉唾だと思ってください。

けれど、基本的な考え方である
・本数が増える、糸の横移動(圧力の分散)が出来ると外れにくくなる

ということはまぁ信じてもらっても良いことだと思います。これに関しても証拠はないのですが物理的にそうなるはずですし、そもそも各技法もこの考え方を基準に複雑な糸の通し方を考えていますしね。

 

 

さて。一方で、糸を通すということは組織を引き裂いて糸が通されていくということです。

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必ず侵襲(組織へのダメージ)があり、炎症が起こり、腫れるということです。それは糸の取れにくさと逆に働き、
・本数が増える、糸の横移動(圧力の分散)が多いと炎症が大きくなる

という事です。つまり、糸が増えて複雑な運糸をしているのに腫れにくい、と謳っている手法があったら嘘です。気をつけましょう。

 

さて、最後に。

糸が取れた後も多少の線維化、ひきつれがそこには残る場合があり

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抜去した後も二重癖が取れない場合が時々あり、それはこの糸を入れたときの癒着が原因となっているわけです。それを逆手に取った少し変わり種の埋没縫合方法が自然癒着法やビーズ法です。

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   自然癒着法の運糸    自然癒着法で生じる癒着 

これは複雑な運糸を内部で行うことで皮下にあえて癒着を作ろうというのがコンセプトです。糸がたとえ外れても、内部に沈み込んでも癒着が残るという考え方。今までとは違う少し変わり種の考え方ですね。

 

さて、ここまでは糸の通し方をメインにお話してきました。最後に糸を留めてくるときの糸玉の留め位置について。

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場所は粘膜側皮膚側に大別されるわけです。
糸を通すときは一回皮膚粘膜を貫いて同じ穴を通せばメスを入れなくても良いのですが、糸玉を内部にもぐらせる部位だけは必ずメスで小穴を開けなければいけません

ということはそれぞれのメリット・デメリットとしては

皮膚側

メリット  ・抜去がしやすい
デメリット ・表面から糸玉が見えうる
      ・しっかり糸玉が埋まってなかった場合表面に露出

結膜側

メリット  ・表面から糸玉は見えない 
      ・皮膚皮に穴があかない→当日から化粧ができる
デメリット ・抜去しにくい
      ・しっかり糸玉が埋まってなかった場合表面に露出、眼球へのダメージ

となるわけです。

一言でまとめると
・結膜側に糸玉がある方が整容性は高いが、眼球へのダメージが起こりやすい。

ということですね。

 

さて長々と読んで頂きありがとうございます。
ということで、ここまでお付き合いしていただいたあなたは当初の予定である

☑二重はどうやって出来るのか ~一重と二重の違い~
☑埋没二重手術とは
☑糸の入れ方でどのような差が生まれるか

がもう判別できるようになっているはずです。

各クリニックごとのHPで手術説明の図があります。また手術を受けようとカウンセリングを受ければ医師よりその説明があるはずです。その際、露骨にここに書いてあることと反することを主張された場合は疑ったほうが良いでしょう。

美容手術なんて、急いだほうが良いものなんてありません。

その日は見積もりだけ持ち帰って、↑を読み返して考えてみてください。

それでもわからないことは再度カウンセリングを受けてみましょう。
そのために我々美容外科医がいるわけですからね。

二重になりたいすべての人に適切な医療がなされることを祈ります。
それでは本日はここまで。

 

2020・9・24 中村優