眼瞼下垂かどうかの判断は難しい① ~MRD~
形成外科認定専門医・博士の中村優です。
こんにちは。今回は眼瞼下垂の診断の仕方についてお話します。
まず、眼瞼下垂について、よくあるご相談内容を紹介します。
「A病院で眼瞼下垂だよ、と言われたけれど
B病院では眼瞼下垂ではないと言われました。
私って眼瞼下垂なんでしょうか?」
A病院の診断がヤブで、B病院が正解?(あるいはその逆)
それもあるかも知れません。
けれで、A病院、B病院どちらの見解も当たっている場合もあります。
どういうことか?
それを解説していきます。
実は、眼瞼下垂の定義はいくつもあるんです。
そのうち、よく使われるものがMRDという測定値を使ったものです。
角膜反射と上眼瞼縁までの距離をMRD-1(2もあるよ)と呼びます。
これが、2.7mm以下の状態のことを眼瞼下垂と定義します(Frueh BR. The mechanistic classification of ptosis. Ophthalmology. 1980;87(10):1019-1021.)。
けれど、2.0mm以下を眼瞼下垂と定義することもありますし、3.5mm以下を眼瞼下垂と定義することもあります。つまり、その測定値の基準を誰が提唱するものに則るかで眼瞼下垂の定義が変わってしまうのです。
じゃあ、どれを信用すればいいの?無難なチョイスはガイドラインに従うことです。
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CQ11
そもそも眼瞼下垂症の定義は何か?
推奨
手術治療を要する眼瞼下垂症の基準として,下記が推奨される(グレードB)。
定量的評価基準として; ・正面視時MRD 1 が2 mm 以下
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ということで、現時点ではMRDは2mm以下が眼瞼下垂の手術適応らしいというのが形成外科学会的推奨な訳です。
このMRDを基準として、機械学習を利用して画像をアップロードするだけで眼瞼下垂かどうかの診断装置を開発したという論文が先日の日本形成外科学会雑誌に掲載されていました。時代は進んでますね~
というか私ですね。(宣伝宣伝~♪)
ですが!!ここまで言っておきながら、MRDだけでは眼瞼下垂かどうかは真に診断できているとは言えません!!それはどういうことか!?
今後また解説していきますね。
それでは今回はここまで。
2021/5/5 中村優
ザッツ形成外科! ~デベソも治せるもんなんですねぇ~
更新します詐欺の常習犯であり
形成外科認定専門医・博士の中村優です。こんにちは。
今回は形成外科が何をしている科なんだか紹介していきたいシリーズ第3弾!
テーマはデベソです。
ただ出っ張ってるのを切り落とすだけではないのです。
出っ張りが何かを確かめつつ、それを押し込み窪みを作る。
その窪みを最大限に活かすように皮膚を這わせて行かないといけなくて、ここに形成外科の真骨頂があると言えます。
今回は一例としてS字に皮膚切開デザインを作成する梶川法を紹介しています。
皮膚をたっぷり!持ってくることができる反面、その皮膚の余裕を臍輪よりも外に求めるため臍より外にも傷ができるのが弱点です。しっかりと臍が出っ張ってるデベソのほうが皮膚の余裕はあるため複雑な皮弁を作る必要がなかったりするわけです。そういう意味では大変なのは臍の部分が真っ平らになっている症例といえます。
複数の手術方法を知っておき、状態に応じて使い分けることができるのが大事ですね。
それでは今回はここまで。
2021/5/2 中村優
ザッツ形成外科! ~眼瞼下垂治療に対する形成外科医のこだわり~
形成外科の
世の中の認知度を高めたい!!!
はい!昨日と同じスタートから形成外科認定専門医・博士の中村優です。
形成外科が何をしている科なんだかを紹介していきたいシリーズ第二弾は眼瞼下垂です。
ここでしばしば聞かれることが眼瞼下垂の治療は保険適用ですか?
というお話。
眼瞼下垂の診断基準はいくつもあり、現状各医師ごとにまちまちです。
そして、病的な下垂であると診断されれば保険適応です。
ちょっと眼をもっとデカ目にしたいわ❤
は、自由診療です。
また、術後の仕上がりについても、二重の幅が微妙に違うだとかは、保険診療の範疇ではなく自由診療の範疇に入ります。
右上の躯(に似た女性)みたいになっていれば眼瞼下垂は治療されていると言えます。目がしっかり開くようになってさえいれば大前提である、眼瞼下垂の状態は治療されているわけで。
ですが。その状態、嬉しいですか??
やはり、右下の(火傷痕があれば)躯のような状態になるのが理想的ですよね。
美容外科は基本的には形の外科である形成外科の一ジャンルだと思っています。
大雑把な考え方としては「マイナスを0に近づけるのが、形成外科の役割。0をプラスに進めるのが美容外科の役割」です。美容の知識や考え方なしに形成をやっても最終ゴールが0ではもったいない。ぜひプラスを目指して手術に挑むべきで、それが形成外科医の理想的な手術への望み方、心構えじゃないでしょうか。
マイナスを0に近づける範疇に関しては保険診療。
0をプラスに進めることに関しては自由診療。
ただし、やるからにはなるべくプラスを提供する!
それが眼瞼下垂に対する形成外科医のこだわりです。
それでは今回はここまで。
2021/4/7 中村優
ザッツ形成外科! ~でっかいほくろの治療法~
形成外科の
世の中の認知度を高めたい!!!
はい!形成外科認定専門医・博士の中村優です。
形いじりの外科、形成外科で飯を食ってるワタクシですが、どうも世の中では形成外科の認知度が低い。
形成外科も整形外科も世の中的には差がよくわからないらしいのが現状です。
その被害?というか、二重にしてほしいと希望して整形外科を受診する患者さんは未だにいたりするらしいです。
ということで形成外科が何をしている科なんだかを紹介していきたい。
と雑な発想からスタートした図解シリーズ。
題してザッツ形成外科。
今後ぼちぼち更新して行きたく思います。
初回のお題はでっかいホクロについてです。
キレイに治りゃ何でもいいんです。
だからこそ難しくて、だからこそ面白い。形成外科はそういう変な診療科なんです。
皮弁のパズル感に魅せられて入る人は少なくない。
けど、これ自前でバシッと決められるようになるまでなかなかどうして知識と経験がいるんですよね。
初回はそんな診療の自由度の高さをご紹介。
皮弁、これ重要ワードです。今後何度もでてきます。要チェックやで~!
それでは今回はここまで。
2021/4/6 中村優
乙骨先輩が好きなんだ!
今回も全然医学と関係ない更新。
総会のスライド準備と3月のオペラッシュにやっつけられて全然絵を描けていない。時間配分的なやつがうまくできる能力が欲すぃ。
ところで最近のジャンプはキてますね。
激熱です。
呪術、ヒロアカ、ドクターストーン、逃げ若あたりが個人的な当たりです。
毎週月曜日が楽しみ。
ということで(?)描いた乙骨先輩。登場からずっと目が死んでいる。大丈夫か。
そんな中美容外科医の私としましては彼のクマが見逃せず、
ついつい整形しちゃいました。
雑コラである。
そんな事やってたら本誌でも乙骨先輩の眼のハイライトが戻ってきました。
良かったよかった。クマは取れてなかったけどね。
4月からはブログの更新をマメにしていこうと思います。
出来れば毎週更新目指します。次回からは形成外科疾患シリーズ、鼻整形シリーズあたりの図解を始めていこうと思います。乞うご期待。
2021/03/26 中村優
逆まつげの治療について図説するよ
こんにちは、形成外科認定専門医・博士 中村優です。
今回は二重などの瞼診察の時に、ついでに相談されることが多い逆まつげについてです。
でも、逆まつげって角膜障害なんかが生じたら機能障害も生じるわけで、実は「ついで」の相談ではないと思うんですよね。きちんとした病態の理解と治療が必要です。
てなわけで今回の解説を始めていきます。
逆まつげ、と一口に言っても実は病態がいくつかに分かれます。
このうち、 睫毛乱生は一部分、数本のみまつげが生える方向が乱れているものです。
この治療はかんたん、その部分だけ伸びるたびに抜毛してもそれなりに問題はなくやっていけます。
けど、睫毛って抜くと地味に痛いんですよね。
根治的な治療法もあるのでそれをご紹介します。
変に生えてる睫毛だけを倒してやるわけです。
毛穴に極細の電気メスを差し込んでジュッと焼き潰す、ので、かなり細かい作業になります。ルーペは必須です。
次に睫毛内反及び眼瞼内反です。これは生え方が内向きであるか、生え方自体は普通なのに瞼全体が倒れ込んでいるかの違いがあります。
生える向きに関しては生まれつきの要素が大きく(先天性)、瞼の倒れ方に関しては外傷や加齢性退行性の変化や、顔面神経麻痺などの要素(後天性)によるものが大きいです。
どちらも、大雑把に!!治療の方法を説明すると、前側に倒し込んでやればいいのです。
この際、注意が必要なのが、瞼の傾きはバランスで決まるということです。逆まつげを治すために前側に全力で倒してやると、これは眼瞼外反、いわゆるアッカンベー状態になってしまうのです。
ということで、今回も具体的な治療経過を提示します。
左目に眼痛があり、目やにが酷くて眼科を受診された方です。
重度の逆まつげ(眼瞼内反)のため睫毛がぺっとりと眼球にくっついてしまっており、確認できない状態でした。
術後は横からも正面からも下睫毛が見えるようになっているのが分かります。眼痛もなくなりました。
最後に、今回のお話を全部まとめた原本を載せておきます。
主訴:逆まつげ
診断名:眼瞼内反症
患者:70代・女性
治療内容:眼瞼内反症手術(切開法)
リスク・副作用:腫れ、内出血、左右差、感染、過矯正/低矯正などのリスクあり
手術費用:片眼・保険適応3割負担で7770円(1割負担であれば、2590円)。
その他術前検査、術後の診察代、薬剤の費用が別途あり。
それでは、今回はここまで。
2021/03/01 中村優
2021/12/09 中村優(諸注意追記)