鼻の下が長いと云ふこと
形成外科認定専門医・博士の中村優です。
こんにちは。今回は鼻の下の長さについてのお話です。
つい先日鼻下を短くする手術についてのイラストを描きました。
鼻の下、人中部分を切除して短くすることでかっこよくする手術、人中短縮(リップリフト)についてです。
手術をすることで鼻の下の距離を狭め、結果として上唇が巻き上がるような変化が生じます。垂れ下がったような、間延びしたような印象の上唇を改善させることができます。
このイラストを見た方から、ふと一言。
「鼻の下が長いとやっぱり整容的に良くないの?」
ふむ。ではそこについてちょっと考えてみましょう。
鼻の下に関しては昔から言われている慣用句があります。
”鼻の下を伸ばす”【はなのしたをのばす】
女に甘くだらしないさま。鼻の下が伸びてデレデレした締りのない顔で、常に異性との戯(たわむ)れを求めているさま。鼻の下が間延びしていて、緊張感のない顔つき。
いい意味としては、、使われていないですね。
長い、短いどちらが正しいとは言えないけれど、どうも長くなる方へのバランスの崩れのイメージの悪さがあるらしいということはわかってきました。
じゃあ、鼻の下が長くなるとブサくなるのか?
そういう知りたいことは全部GOOGLEが教えてくれます。
教えてGOOGLE先生!
鼻の下 長い 美人だと検索結果は9,710,000 件で
芸能人としては、木村カエラ 西内まりや 雛形あきこ 松たか子さんあたりが代表として出てきます。
一方で、
鼻の下 短い 美人だと検索結果は2,060,000 件
芸能人としては、石原さとみ、佐々木希、桐谷美玲、島崎遥香さんあたりが出てきます。
さて、検索結果の数で結論は出ましたね。
”鼻の下 長い 美人のほうが検索数が多い=鼻の下が長い方が美人”
と、断ずるのはまだ早い。
ま、要するに長かろうが、短かろうが”美人は美人”なんですよね。
その人毎のベストバランスに近ければ整って見えてくるんです。
種明かし的な、あくまで予想混じりな見解ですが、鼻の下が長い~のほうが検索で引っかかってくるのはそもそもその言葉のほうがコンプレックスになりやすく、検索自体がそもそもされるからだと考えます。
ということで。
世の中的には”鼻の下が長い”ことのほうが気にされている(検索されている)らしいことまではなんとなく読み取れました。
実際に美容外科やってても鼻の下が短いのが気になります!という相談よりも、鼻の下が長いのが気になります!というご相談のほうが多いんですよね。体感的には。
でもそこまでの話。鼻の下が短くて治療を希望される方もいますしね。 何が良いかは人によるんでしょう。
今回のまとめ
・鼻の下の長さを手術で改善する方法がある
・鼻の下が長い美人も短い美人もいる
、のでどちらが整容的に優れているかは意見が分かれる
・結局はバランス
とりあえず、鼻の下が長いことを気にされて手術を検討されている方は必ずしもその手術はいらないかもよ?イメージに乗せられてるだけかもよ?ということを、お知りおきいただければ今回の更新の趣旨はつかめています。やらなくて良い手術はやらないほうが良いんです。
手術のプロモーションをするつもりが、なんだかただのコラムな更新でした。
それでは今回はここまで。
2021/6/2 中村優
眼瞼下垂かどうかの判断は難しい② ~偽性眼瞼下垂とは?~
形成外科認定専門医・博士の中村優です。
こんにちは。今回は眼瞼下垂の診断の仕方についての続編です。
前回の更新では、眼瞼下垂の診断基準としてMRDを利用するということを解説しました。
今回は「MRDを測るだけでは眼瞼下垂かどうかは判断できない」というのがテーマです。
・・・いきなり矛盾したことを、言い出した感じになりましたね。
これは もう図で見たほうが分かりやすいです。
と、言うことです。
眼瞼下垂は眼瞼挙筋の衰えや腱膜のたるみで、結果として瞼が引き上がられない状態。
その評価指標として瞼の開き具合=MRDを利用しようとしたはずが、瞼のたるみが強い場合、瞼を引き上げる力自体はあるはずなのに、皮膚のたるみに隠されて瞼が開いて無い様にみえてしまうことがあるのです。このような状態を偽性眼瞼下垂と呼びます。
当たり前ですが筋肉がたるんでいるわけではないので、いわゆる挙筋前転をしても偽性眼瞼下垂の人に治療効果はほぼありません。こういう人にはたるみをとる、つまり皮膚切除が理にかなった治療であると言えます。
ということで。
今回は
・MRDだけ見てれば眼瞼下垂を診断できるわけじゃない
・MRDの数値としては悪いのに本当は眼瞼下垂じゃない偽性眼瞼下垂がある
ということを説明してきました。
次回は今回の逆、MRDは良いのに実は眼瞼下垂です、みたいな状態があることについて説明していく予定です。
主訴:目の開きづらさ、上瞼のたるみ
診断名:上眼瞼皮膚弛緩症、偽性眼瞼下垂
患者:60代・女性
治療内容:眉毛下皮膚切除術
リスク・副作用:腫れ、内出血、左右差、感染、傷跡が残るなどのリスクあり
価格:モニター価格で約30万円
それでは今回はここまで。
眼瞼下垂かどうかの判断は難しい① ~MRD~
形成外科認定専門医・博士の中村優です。
こんにちは。今回は眼瞼下垂の診断の仕方についてお話します。
まず、眼瞼下垂について、よくあるご相談内容を紹介します。
「A病院で眼瞼下垂だよ、と言われたけれど
B病院では眼瞼下垂ではないと言われました。
私って眼瞼下垂なんでしょうか?」
A病院の診断がヤブで、B病院が正解?(あるいはその逆)
それもあるかも知れません。
けれで、A病院、B病院どちらの見解も当たっている場合もあります。
どういうことか?
それを解説していきます。
実は、眼瞼下垂の定義はいくつもあるんです。
そのうち、よく使われるものがMRDという測定値を使ったものです。
角膜反射と上眼瞼縁までの距離をMRD-1(2もあるよ)と呼びます。
これが、2.7mm以下の状態のことを眼瞼下垂と定義します(Frueh BR. The mechanistic classification of ptosis. Ophthalmology. 1980;87(10):1019-1021.)。
けれど、2.0mm以下を眼瞼下垂と定義することもありますし、3.5mm以下を眼瞼下垂と定義することもあります。つまり、その測定値の基準を誰が提唱するものに則るかで眼瞼下垂の定義が変わってしまうのです。
じゃあ、どれを信用すればいいの?無難なチョイスはガイドラインに従うことです。
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形成外科診療ガイドライン6巻(2021/5/5時点)
CQ11
そもそも眼瞼下垂症の定義は何か?
推奨
手術治療を要する眼瞼下垂症の基準として,下記が推奨される(グレードB)。
定量的評価基準として; ・正面視時MRD 1 が2 mm 以下
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ということで、現時点ではMRDは2mm以下が眼瞼下垂の手術適応らしいというのが形成外科学会的推奨な訳です。
このMRDを基準として、機械学習を利用して画像をアップロードするだけで眼瞼下垂かどうかの診断装置を開発したという論文が先日の日本形成外科学会雑誌に掲載されていました。時代は進んでますね~
というか私ですね。(宣伝宣伝~♪)
ですが!!ここまで言っておきながら、MRDだけでは眼瞼下垂かどうかは真に診断できているとは言えません!!それはどういうことか!?
今後また解説していきますね。
それでは今回はここまで。
2021/5/5 中村優
ザッツ形成外科! ~デベソも治せるもんなんですねぇ~
更新します詐欺の常習犯であり
形成外科認定専門医・博士の中村優です。こんにちは。
今回は形成外科が何をしている科なんだか紹介していきたいシリーズ第3弾!
テーマはデベソです。
ただ出っ張ってるのを切り落とすだけではないのです。
出っ張りが何かを確かめつつ、それを押し込み窪みを作る。
その窪みを最大限に活かすように皮膚を這わせて行かないといけなくて、ここに形成外科の真骨頂があると言えます。
今回は一例としてS字に皮膚切開デザインを作成する梶川法を紹介しています。
皮膚をたっぷり!持ってくることができる反面、その皮膚の余裕を臍輪よりも外に求めるため臍より外にも傷ができるのが弱点です。しっかりと臍が出っ張ってるデベソのほうが皮膚の余裕はあるため複雑な皮弁を作る必要がなかったりするわけです。そういう意味では大変なのは臍の部分が真っ平らになっている症例といえます。
複数の手術方法を知っておき、状態に応じて使い分けることができるのが大事ですね。
それでは今回はここまで。
2021/5/2 中村優
ザッツ形成外科! ~眼瞼下垂治療に対する形成外科医のこだわり~
形成外科の
世の中の認知度を高めたい!!!
はい!昨日と同じスタートから形成外科認定専門医・博士の中村優です。
形成外科が何をしている科なんだかを紹介していきたいシリーズ第二弾は眼瞼下垂です。
ここでしばしば聞かれることが眼瞼下垂の治療は保険適用ですか?
というお話。
眼瞼下垂の診断基準はいくつもあり、現状各医師ごとにまちまちです。
そして、病的な下垂であると診断されれば保険適応です。
ちょっと眼をもっとデカ目にしたいわ❤
は、自由診療です。
また、術後の仕上がりについても、二重の幅が微妙に違うだとかは、保険診療の範疇ではなく自由診療の範疇に入ります。
右上の躯(に似た女性)みたいになっていれば眼瞼下垂は治療されていると言えます。目がしっかり開くようになってさえいれば大前提である、眼瞼下垂の状態は治療されているわけで。
ですが。その状態、嬉しいですか??
やはり、右下の(火傷痕があれば)躯のような状態になるのが理想的ですよね。
美容外科は基本的には形の外科である形成外科の一ジャンルだと思っています。
大雑把な考え方としては「マイナスを0に近づけるのが、形成外科の役割。0をプラスに進めるのが美容外科の役割」です。美容の知識や考え方なしに形成をやっても最終ゴールが0ではもったいない。ぜひプラスを目指して手術に挑むべきで、それが形成外科医の理想的な手術への望み方、心構えじゃないでしょうか。
マイナスを0に近づける範疇に関しては保険診療。
0をプラスに進めることに関しては自由診療。
ただし、やるからにはなるべくプラスを提供する!
それが眼瞼下垂に対する形成外科医のこだわりです。
それでは今回はここまで。
2021/4/7 中村優