抜糸の仕方について少し語る
こんにちは、形成外科認定専門医 中村優です。
今回は外科系医師の基本、抜糸のお話です。
え、抜糸なんてやり方あるの?と思われるかも知れません。
僕もそう思っていました。
あるんです。
大学病院勤務時、上司から患者さんの抜糸をしてみろと言われ、抜糸をしはじめた直後にはさみを取り上げられたことがありました。
曰く、「糸切り3年。糸も丁寧に切れないやつにメスは握れない。」
なんじゃそりゃ!?ですよね。
ですが実際、大学病院勤務時の初年度は、執刀を1度しかしていませんでした。
下積みって大切です。後、最終的に専門医を取り、学位を取得するまで大学に在籍しましたが、こういった下積みを経て、徐々に執刀する機会が増えていき、最終的には大学病院でのロングのオペでもメインで任せてもらえるに至りました。
基礎がしっかりしてない人間に応用は出来ない。今では、糸も丁寧に切れないやつにメスは握れない!の意味、少しわかりますが・・・・
まぁ、ちょっと極端がすぎる理論だと思いますね。
僕は後輩にはどんどんやらせてあげていました笑
さて。ということで、問題形式で。
2✕2の4通り。
さて、回答は?
答えは20行後。
あっていたでしょうか?
体外にある状態の糸は不潔です。
ですので、切った糸が皮下を通るのが最低限になるように、また糸を引き抜く力が傷を開く方向にかからないようにするわけです。
次に刃先の糸への当て方について。
糸をあまり引っ張あげるのは良くないです。
患者さんにとって、それ、激痛です。
刃の横っ腹だったら、押し付けられても痛くないですよね?
刃先が皮膚に当たらないように、糸と皮膚の間にすっと潜らせてあげるのが正解です。
そして最後にハサミの使い方。
ぱち!ぱち!と音がなるような切り方では、刃先が揺れるので駄目です。
スッ、スッと万力のように力を込めて切っていくのが望ましい。
3年分の成長を出来たでしょうか?
それでは、今回はここまで。
2020/12/09 中村優